AIで普通の動画を3D動画に変換する

「この世界が、夢だって思うこと、ない?」
 八月半ば、二年生の希望補習が終了し、帰宅する途中。混雑した大通りを歩きながら、不意に言われたその言葉に、あきはきょとんとした。
 少し色を抜いて茶色くした髪を長めのショートにし、つり目でそれなりに整った顔立ち、着くずした白いワイシャツにカーキ色のズボンといった制服姿に所々汚れた白いショルダーバッグをかついでいる。先日十七歳になったばかりだ。
 しかし、この十七年間、彼は一度もそんなことを考えたことはなかった。
「何で……?」
 彼は振り向き、質問を投げかけた黒髪セミロング、目尻の下がった眼、白いブラウスの上に輝翔と同じカーキ色のベストとスカートを着て黒いトートバッグを左肩にかけた少女、なみに聞き返した。
「私、たまに考えるの。この世界は、誰かの夢で、私はその中に出ているだけだとか、誰かに操られていて、私はそのキャラクターなんじゃないかとか……」
 時々、絵波はわけのわからないことを突然言い出す。幼なじみだけあって、輝翔はもうそれが普通とわかっているのだが、質問が、いつも妙なことで、その度に生まれる疑問――何でそんなことを考えるのか――は、いつになっても変わらなかった。
「面白いこと考えるんだな、絵波」
「面白いことじゃないよ。でも、もしそうだったらって考えると……恐くない?」
「何で?」
 あっけらかんと答える輝翔の言葉に、絵波は少し間を置き、深刻な表情で
「……だって、自分の意志で生きてるってことじゃないんだよ? 誰かが生み出して、思いのままに操って、いらなくなったら、消されて……それ、考えたら、恐くない?」
 あまりにも真剣に言うので、輝翔は言葉を無くしてしまった。目線を空に向けて、小さく唸る。
「……確かに、そんなの嫌だし、恐いけどさ……今の俺達だって、そんなものじゃねぇ? 好き勝手に人が人の命を奪ったりしてさ……同じようなものだろ?」
 ちょっと違うけどな、と付け加える。
「そうなんだけど……」
「考えてたらキリないぜ。そんなこと気にしてたら、自分の好きなように生きてけないだろ? 行こうぜ」
 未だ浮かない顔をしている絵波の手を引っ張って、輝翔はまた歩き出した。
 その時、彼の目に、一人の人間が映った。
 ブラウスにロングスカート、長い髪。距離があってはっきりとはわからないものの、至って普通の人間なのだが、なぜか彼の目に強烈な印象を持たせた。
 と共に、彼は妙な感覚を覚えた。もやもやしていてわからないが、強いて言うなら、懐かしい温かさと……拒絶を混ぜた様な、理解出来ない感覚だった。

 

第二話へ続く

           ORIGINAL NOVELSへ              TOPへ